貯蓄型保険の罠

資産形成

 本日のテーマは「貯蓄型保険の罠」についてのお話です。

 皆さんは貯蓄型保険について、どのような印象をお持ちですか?

 不幸が起こった時のリスクヘッジだけでなく、それでいてお金も貯まるのだから、一石二鳥と感じるでしょうか。そのお得と感じている商品が、もしかすると保険会社が仕組んだ罠かもしれません。

 この記事では貯蓄型保険について深堀りして、垣間見ることに致しましょう。

純保険料と付加保険料

 まずは保険の仕組みについてのお話です。

 貯蓄型保険が罠だと言うのなら、保険の仕組みを微細な部分まで理解する必要性が生じます。保険の仕組みは2つの枠組みに分かれます。

 それは「純保険料」と「付加保険料」です。

①純保険料

 まずは「純保険料」についてです。

 純保険料とは、保証や貯蓄のために使われる掛け金のことをそう呼びます。

 保険会社は、多くの人から純保険料を徴収して、不幸遭遇者へ保険金を支払うという「リスクヘッジ」と「レバレッジ」を組み合わせた仲介業務を行っているのです。そのおかげで保険加入者は、医療・生命・火災とそれぞれの不幸と出くわした時に、保険金が支払われるという流れです。

②付加保険料

 次に「付加保険料」についてです。

 付加保険料とは、保険会社への手数料として支払う掛け金のことをそう呼びます。

 保険会社は、リスクヘッジの保険仲介業務を無償で行っているのではありません。ビジネスの世界ですから、そこには付加保険料という名の手数料が付け加えられている。我々はリスクヘッジの掛け金以外にも、お金を支払っているというファクトを忘れてはいけません。

 そしてこの付加保険料は「保険販売員の報酬」・「保険会社の利益」へと回っていくのです。

貯蓄部分にも手数料

 では、ここから本記事の核となるお話です。

 なんと「貯蓄部分にも手数料」が発生しています。

①保証と貯蓄

 貯蓄型保険というのは、保証と貯蓄の2つの機能性をもつ保険商品です。

 これだけ見れば、保証のみの保険商品で、返戻金がないものは損に感じるかもしれません。しかし貯蓄型保険の方が損なのです。なぜなら保証と貯蓄という2つの側面に付加保険料が追加されてしまうから。

②高額な手数料

 そして保険の付加保険料は、高額な手数料となります。

 正式に保険会社が付加保険料を公開しているわけではありませんが、支払う保険料の3割(30%)が実質的な付加保険料ではないかと言われています。もともと「累計数百万~1千万円の高額商品」に手数料が記載されていないことも問題ですが、この高額手数料はさらに問題です。

③投資信託との比較

 ここでは、資産運用の王道「投資信託」と手数料を比較してみましょう。

 投資信託のミクロな内容は別記事で触れるので、ここでは数字の比較として軽い気持ちで聞いてください。

 アクティブ・ファンドという投資信託は、初年度の年間手数料4,5%程であり高額と言われています。それに対してインデックス・ファンドは、年間手数料0,5%以下で選択すべき商品であるというのが一般的な意見です。では貯蓄型保険の付加保険料(手数料)の30%と比較してみてください。

 これこそが「貯蓄は貯蓄」・「保険は保険」と分けなければいけない理由です。もし貯蓄という目的を果たしたいのなら、そのツールは保険ではなく、貯金や投資信託による長期投資のほうが合理的ということですね。

掛け捨ての保険

 上記の理由から、保険加入者は迷わずに「掛け捨ての保険」を選択しましょう。

 掛け捨てとは、満期保険金もなく、途中で解約しても解約返戻金がない保険のこと。

 一見、損にしか見えませんが、もともと保険の本質は「損な賭け」です。お金を増やすというプラスの目的で行うものではない。損をしたくないのなら保険には最初から頼らず、貯蓄や投資で自助努力する選択のほうが賢明でしょう。

 それでも「不幸への不安・恐怖を払拭したい」という目的を持つのなら、多少の損を背負って掛け捨て保険の1択です。貯蓄型保険であわよくば得したいという欲求が、自分を損の沼に突き落としてしまうのです。

最後に

 本日は「貯蓄型保険の罠」というお話でした。いかがでしたか?

 私は過去に金融機関で従事していたことがあり、保険セールスのタスクも熟さざるをえませんでした。

 現場の人たちは、貯蓄型保険に現在加入している人に対して、今より保証が手厚い高額保険に格安で転換できるよと勧めていたのです。しかしそれはお得ではなく、貯蓄部分を保険会社に支払うことにより安くなっているだけ。そして蓄積してきたお金は、保険会社のもとへ移ってしまうのです。セールスマンは言葉の魔術で、長所だけを上手く頭に残すように、短所がそこまでマイナスでないように会話を紡ぎます。

 このビジネス形態に対して、個人的な主観ではマイナスな気持ちを持ちますが「悪」だとは思っていません。善悪はそれぞれの主観の物語であり、どれだけ吟味しても正しい答えはないものだから。ただ私が金融機関の業務と縁を切った理由は、このビジネス形態が好きではないから。これからは多くの人を、搾取する仕組みから抜け出すための一助になりたいと思っています。

 本日はご精読ありがとうございました。

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