「正貨」と「2つの紙幣」

お金

 本日のテーマは「正貨と2つの紙幣」についてのお話です。

 前記事で「お金の歴史」を紐解きました。5500年以上前という長い年月をかけて、現在のお金の形状「紙幣」へと変化していったのです。そして前回の文末で、紙幣には2つの種類が存在するという内容を軽く触れさせて頂きました。

 文末で紹介した2つの紙幣についてのお話をするために、「正貨」・「兌換紙幣」・「不換紙幣」という3枠でお話を進めていきます。

正貨

 まずは「正貨」についてです。

 正貨とは、「額面上の価値」だけでなく「実質的な価値」も持ち合わせる通貨のこと。

 まず「実質的な価値」と「額面上の価値」のおさらいです。詳しい内容は「お金という虚構」に記載しているので、是非ご閲覧ください。

 実質的な価値とは、実際そこに価値があるもの。例えば「アクセサリー」であれば、身につけてオシャレをしたり、観賞用にしたりなどの価値が存在します。それに対して額面上の価値は、価値がないものに対して「虚構」となる数字の価値を与えたもの。この嘘が「お金」という発明品であり、価値の交換手段・貯蓄・尺度の役割を果たし、文明発達の一助となったのです。

 この情報を踏まえた上で、正貨の定義を想起してみましょう。正貨とは「実質的な価値」と「額面上の価値」の両方を持ち合わせるモノでした。この定義から考えられる「正貨」と「正貨でないモノ」を具体的に見ていきます。

 正貨の具体的ツールは「金銀」です。金銀は観賞用という実質的な価値と、通貨という額面上の価値の両方を兼ね備えています。正貨でないモノの具体的ツールとしては「紙幣」が挙げられるでしょう。私たちが日常生活で使用する1万円札は、通貨になるという額面上の価値以外は持ち合わせておりません。つまり紙幣は、お金として使えなければ紙切れ同然。白い紙の方が、文字を書いたりできる分だけ実質的な価値は高いと言えます。

 ではここから2種類の紙幣のお話です。名称は「兌換紙幣」と「不換紙幣」です。

兌換紙幣

 紙幣の種類1つ目は「兌換紙幣」です。

 兌換紙幣とは、正貨と交換義務のある紙幣のこと。つまり政府に紙幣を持っていけば、正貨と交換してもらえるということ。兌換紙幣自体には額面上の価値しかありませんが、実質的な価値を持ち合わせた正貨と交換できるので、信頼感は上がります。ここから少し微細な部分を紐解き、兌換紙幣の特徴を2つ見ていきましょう。

①発行量は有限

 兌換紙幣の特徴1つ目は「発行量は有限」であること。

 正貨と交換ができるというメリットを守るためには、無闇矢鱈に紙幣を刷ることは出来ません。発行量は正貨の量で決まるので限定されてしまう。結果的に経済を回すためのツール(お金)が少なくなるので、経済停滞で不景気になるというマイナス面を生み出したり、貿易赤字に弱くなったりするでしょう。

 貿易赤字とは、輸出で外国相手から稼ぐお金よりも、輸入で海外に支払うお金の方が多くなってしまうこと。紙幣が国外へ出ていってしまい、それでも新しく刷ることができない。国自体が、どんどん貧乏へと転がり落ちてしまうのです。

②価値が安定

 兌換紙幣の特徴2つ目は「価値が安定」すること。

 正貨の量と同じ枚数しか発行できないので、紙幣への価値は安定します。全てのモノに言えることですが、程々にあるから価値を感じる。増え過ぎれば、何でも価値は低下していくものです。紙幣の価値が安定すれば、物価のインフレ・デフレも起こさないというメリットも生まれるでしょう。

不換紙幣

 紙幣の種類2つ目は「不換紙幣」です。

 不換紙幣とは、正貨と交換できない紙幣のこと。こちらは政府に紙幣を持っていっても、正貨と交換できません。そうなれば紙幣への信用度も下がる。そんな不換紙幣を信用するには、その国家自体を信用してはじめて価値が生まれます。ではこちらも微細な部分を紐解き、不換紙幣の特徴を2つ見ていきましょう。

①発行量は無限

 不換紙幣の特徴1つ目は「発行量は無限」です。

 正貨の量に関係なく、政府の都合で通貨量をコントロールすることが可能となります。「不景気」や「国家の緊急事態」などでも、自由に新たな紙幣を刷れれば、一旦の応急処置にはなるでしょう。新型コロナウイルスで国民に給付金が配られましたが、これも日本国が状況に合わせて不換紙幣を刷っているという一事例です。

②価値が不安定

 不換紙幣の特徴2つ目は「価値が不安定」ということ。

 紙幣の量が増えていけば、お金の価値自体は下がっていきます。なぜなら価値とは「希少性」だから。そして価値の不安定は「国際取引の障壁」にも繋がります。諸外国は価値が下がった通貨をもつ国家を信用しなくなり、そんな国とは国際取引を行いたいと思わないでしょう。そして国家がデフォルト(債務不履行)を起こせば、今まで貯めていたお金はただの紙切れへと変貌します。

最後に

 本日は「正貨と2つの紙幣」のお話、いかがでしたか?

 日本では1942年(昭和17年)に日本銀行法が制定され、不換紙幣が自由に発行できるようになりました。ここから「紙」や「アルミニウム」という額面上の価値のみの虚構が、崇拝されるようになったのです。

 この事象から学べることは、自助努力することの重要さではないでしょうか。自己実現に興味がなく、変化なしを求める価値観の人もいるかと思います。しかし自分が変化しなくても、世界は変化していく。どのような時代に変化しても「自分のスキル・力」があれば、豊かな生活の確率は上がります。貯金や国家に頼らずに、自己防衛のためにも努力は必要なのです。

 もちろん自己実現のプロセスを楽しみながら、自助努力をして頂きたいなと個人的には思っていますが…。

 本日はご精読ありがとうございました。

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