本日のテーマは「ダムと洪水の比喩」についてのお話です。
私たちの感じる意識には、2つの心が存在します。それは合理的に物事を考える「理性」と、外部の環境によって生まれる喜怒哀楽の「感情」です。この2つの心は意識の奪い合いを繰り広げ、優位になったものが現在の意識としてアウトプットされる。解剖学や脳神経科学など科学的に表すのであれば、理性を司る「前頭前野」と感情を司る「大脳辺縁系」の主権争いでしょう。
本章では、理性・感情を「ダム」と「洪水」の比喩を用いて、3部構成でお話を展開していきます。アジェンダとしては「理性の特徴」・「感情の特徴」・「仕組みづくり」です。
理性の特徴
ダムと洪水の比喩1部目は「理性の特徴」です。
前頭葉の前側に位置する「前頭前野」は、合理的な方向性に舵を切るために感情を制御する役目を持っています。まさに洪水による自然災害から、マチやムラを守るダムのようなものでしょう。しかし周囲を見渡してみると、怠惰に溺れてマイナスの結果を得ている人間が多く見受けられる。つまり理性というダムが決壊してしまっているのですね。その理由を吟味していくと、理性の特徴をいくつか垣間見ることができますよ。
理性の特徴は2つあります。それは「エネルギーが必要」なことと、「パワーが脆弱」なことです。ではそれぞれ紐解いていきましょう。
①エネルギーが必要
理性の特徴1つ目は「エネルギーが必要」なこと。
理性の力を発揮するには、多くのエネルギーを必要とします。車に例えれば、燃費が悪いガソリンを多く消費してしまう自動車と同じでしょう。つまり1日の中で使える時間が、圧倒的に少なくなりがちなのです。
②パワーが脆弱
理性の特徴2つ目は「パワーが脆弱」であること。
また理性はパワーが弱いことも特徴の1つです。どんなに前頭前野で合理的に物事を考えていたとしても、大脳辺縁系が活性化して感情優位になってしまってはパワーで勝つことはできません。
結果、瞬間的快楽に飛びついて長期的に不満を感じる。これは脳の構造的には自然現象であり、無意識に生きれば人間は怠惰であるということ。つまりダムを造る努力をしなければ、洪水が起こることは当たり前ということになりますね。
感情の特徴
ダムと洪水の比喩2部目は「感情の特徴」です。
大脳辺縁系は、外部の影響によって様々な感情を表出させます。具体的には、人間の暖かみも他者への攻撃性も、全てここが源泉にあるのです。感情の悪い側面が出てしまった場合、それは洪水によりマチやムラを浸水させてしまうことと同義ですよね。
ではそんな感情の特徴を3つ見ていきましょう。目次としては「オートモード」と「パワーが強力」なことです。
①オートモード
感情の特徴1つ目は「オートモード」です。
感情は、目に見える全てのモノに反応するという特性を兼ね備えています。なぜなら古代の環境では、常に危険と隣り合わせで生きていたから。もし理性を活用して深く考えていれば、その間に猛獣に襲われてしまうかもしれません。
そして1日脳の体力を維持する必要性がありますので、少ないエネルギーで済むところも特徴の1つ。そのため抽象的な内容を嫌い、具体的で分かりやすいものに飛びつきがちになる。これが人から提示された意見を、思考停止で鵜呑みにすることの根幹です。結果、理性を上手く活用できている人が、感情を刺激する仕掛けを無数に施して、彼らに操作されてしまう訳ですね。
②パワーが強力
感情の特徴2つ目は「パワーが強力」であること。
感情が持つパワーはとても強力で、前頭前野による理性の力をとてつもない差で凌駕するほど。ちなみに理性の力で、特定の物事に意識を向けたとします。しかしスマホや甘いお菓子を見た瞬間、理性は感情に意識をハイジャックされてしまう。その時間はなんと100分の1秒と言われています。
仕組みづくり
ダムと洪水の比喩3部目は「仕組みづくり」です。
真っ向勝負で、理性が感情を抑制することは出来ません。これは洪水を人が体を張って止められないのと同じ。つまり感情を上手く操作するための仕組みを理性でつくる。それこそが正攻法であり、体を動かしてダムをつくるのです。
洪水は街を浸水による崩壊へ導くように、感情は私たちを怠惰な生活に溺れさせ身を滅ぼすことに繋がります。しかしダムをつくれば、水を制御して電力発電などに変換することも可能です。つまり理性で感情を抑えたり、やる気を出させたりする環境づくりを徹底する。感情を抑えるのではなく、環境を整える仕組みづくりにこそ頭をフル回転させるべきでしょう。
最後に
本日は「ダムと洪水の比喩」のお話、いかがでしたか?
理性・感情という2つの心の存在を客観視して、感情を活かすために理性を使いましょう。優秀な人たちは理性の力がすごいのではなく、仕組みを上手く作れた人たちです。是非、あなたも感情に動かされる人間ではなく、感情を使い倒せられる人間を目指してみてください。
ダムをつくる具体的な仕組みづくりについては、選択アーキテクチャの記事でもご紹介しています。ご閲覧頂けると嬉しいです。
本日はご精読ありがとうございました。
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