今回のテーマは「エピソード記憶を刺激する・起承転結法」というお話です。
文章構成シリーズ第2回目となる「起承転結法」は、まさに物語の王道ですよね。映画や四コマ漫画でも使用される構成法で、意外性を作り出し面白さをストーリーに与えます。そんな起承転結法を深堀りして見ていきましょう。
ビジネスと起承転結法
まず「ビジネスと起承転結法」についてです。
ビジネスの現場で使用される情報を伝える文章では、起承転結法はあまり使われません。なぜかといえばビジネスの世界では、「ユーモア」よりも「論理性・明確」の方が優先されるからです。起承転結法はどうしても文章が長くなりがちで、最初は読者が読む意識を持たなければ頭に入ってきません。その事からビジネスでは採用されにくいのです。
しかし、起承転結法のメリットは「ユーモア」以外にも存在します。このメリットを上手く使いこなせれば、ビジネス関連の文章でも役に立ち、読み手に対して多くの恩恵を与えます。
では、そのメリットとは何なのでしょうか?
エピソード記憶を刺激
起承転結法、もう1つのメリットとは「エピソード記憶を刺激する」こと。
人間はただ「意味記憶」で覚えた情報よりも、「エピソード記憶」で覚えた情報の方が記憶定着や理解力が容易になります。そして起承転結法はエピソード記憶を刺激するので、相手に正しく物事を伝えることが出来るのですね。ではそれぞれ、意味記憶とエピソード記憶について解説していきます。
①意味記憶
意味記憶は、ただ事実のみを見聞きした記憶のことです。
例えば、日本史の知識を例として挙げてみましょう。「587年崇仏論争の末、蘇我馬子が物部守屋を滅ぼした」という事象があったとします。このように、起こった事実だけを知ることを意味記憶と言います。
②エピソード記憶
次に、エピソード記憶です。
エピソード記憶は、その事実が起こった背景も一緒にセットで見聞きした時の記憶のこと。
先程の日本史の例でご紹介しましょう。「倭では、仏教を国の政治に取り入れるか否かで、崇仏派・蘇我氏と廃仏派・物部氏が揉めていた」→「蘇我氏は、朝鮮半島や中国などの周りの国が仏教を取り入れて国がまとまっているので、倭も取り入れるべきと賛成」→「物部氏は、倭は八百万の神の国なので、仏教を取り入れてしまえば神や先祖に顔向けができないと反対」→「その崇仏論争の末、587年に蘇我馬子が物部守屋を滅ぼした」
このような具合で、事実だけではなく細かい詳細をエピソードで伝える。結果的に、記憶定着も理解力も飛躍させる効果を持つのです。
扁桃体の活性化
ではなぜエピソード記憶の方が、記憶定着や理解力を促進するのでしょうか?
その答えは「扁桃体が活性化」するから。
扁桃体とは、大脳辺縁系に存在する脳の中の感情を司る部位のこと。この部位が活性化することにより、隣接する海馬も一緒に活性化します。海馬は記憶に関連する脳の部位ですから、長期記憶への手助けが施されるということですね。そして感情が乗っているからこそ理解しやすいのです。
これが意味記憶で情報を覚えるよりも、エピソード記憶で情報を覚えた場合の方が合理的になるメカニズムです。
最後に
起承転結法のお話、いかがだったでしょうか?
ビジネスに不向きと言われる起承転結法も、上手く活用出来れば大きな武器となります。しかし、不向きと言われているところに理由あり。不向きの理由を取り除ける能力を身につけるまでは、ただ論理立てて話す方が効果的かもしれません。
次回の記事では、不向きと言われる理由を深堀りしていきます。楽しみにして頂けると嬉しく思います。
本日もご精読ありがとうございました。
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