読者を演じてみる

仕事

 本日のテーマは「読者を演じてみる」というお話です。

 相手の心の琴線に響く文章を執筆したいのなら、絶対に守らなければいけないポイントが存在します。それは「自分自身が読者を演じてみる」ことです。

 彼らの見ている主観の世界をイメージして、俳優さんが役を上手く演じるような状態を目指すとでも言いましょうか。つまり主観のイメージで終わらせずに、演じるプロセスまで行う。これこそ本当の意味での「相手の立場に身を置く」ことでしょう。とは言っても文章を書き慣れていないうちは、誰を演じるのかの対象が分かりませんよね。

 そこで本章では「演じてみる人物」を3パターンご紹介していきます。目次としては「過去の自分」・「身近な人」・「無知な初心者」の順にご紹介します。

過去の自分

 演じてみる人物1パターン目は「過去の自分」です。

 過去の自分とは、まだ知識・経験ともに浅かった時代の自分のこと。

①成長した自分のアドバイス

 きっと現在では当たり前に解決できる事柄も、当時は悪戦苦闘していたことでしょう。そんな過去の苦い思い出を想起して、1度昔の自分を演じてみましょう。そして成長した自分の知見を持ってして、過去の自分にアドバイスしながら文章を書いていくのですね。

 いきなり相手の立場に身を置くために演じろと言われても、経験したことがなければ難易度が高いもの。しかし過去の自分であれば、経験済みなので演じることも容易なはず。そして的確なアドバイスもしやすいのです。

②苦しみは普遍的なもの

 また人間の苦しみは普遍的なものです。

 自分にとっては過去の苦しみであったとしても、現在どこかに同じ苦しみで悩んでいる人が必ずいる。あなたの苦しみが、人類史上唯一1つだけの苦しみであるわけがないのですね。そして体験に伴った知見によって、その人たちをあなたが救うことが出来るのです。

身近な人

 演じてみる人物2パターン目は「身近な人」です。

 身近な人では、日々の生活で関わりがある人の中から、あなたが解決できたポイントにまだ苦戦して闘っている人をイメージしてみましょう。そして相手の立場に身を置くために演じきり、気持ちをまず理解する。そして助け舟を出す文章を書いていくのですね。

①具体性の提示

 身近な人に成り切ることは「具体性の提示」というメリットが生まれます。

 大多数の人という対象に向けて執筆すると、抽象性が強い内容になってしまいます。それでも抽象を正しく汲み取り、具体へ落とし込める人であれば学びにはなるでしょう。また時には、抽象を論じた文章が大事なのもファクトです。しかしまだその領域に達していない人には、あなたの文章からは価値が生まれません。まずは具体性が強い文章から目指してみましょう。 

②ポジションをとる

 そして具体性の提示をすることは「ポジションをとる」ことと同義です。

 身近な人の悩みを解消する文章は、その目的を解決することが善であるという1つの主観を述べることと同じです。だからこそ敵をつくる可能性が生まれます。なぜなら前提となる目的が異なっていれば、その具体的アドバイスは相手への自己否定に繋がるからです。

 例えば、ダイエットするための情報を執筆していて「ケーキやジュースのマイナス面」を述べたとします。しかしダイエットに興味がなく、ケーキ・ジュースを楽しむ時間を人生の価値観に置いている人からすればどう感じるでしょうか。きっとあなたの意見は強大な敵となるでしょう。

 ですが「情報発信する=ポジションをとる」ことです。「長所と短所」・「善と悪」がコインの表・裏のように、「身近な人を救うアドバイス」と「特定の人を攻撃してしまう断定」はまさしく表裏一体なのですね。ここではコミュニケーションを円滑にまわすことと、情報発信で身近な人を救うことは、全く違うことだと分けて考えていきましょう。

無知な初心者

 演じてみる人物3パターン目は「無知な初心者」です。

 最後に自分が執筆している分野に、まだ触れたことがない人たちのお芝居です。過去の自分や身近な人に成り切るだけでも、きっと特定の人の悩みを解決することは出来るでしょう。ですがこの2つのイメージだけでは、大きな罠に溺れてしまう懸念が生まれます。

①専門用語の多様

 その大きな罠とは「専門用語を多様」してしまうこと。

 専門用語を使っていると、一見博識で優秀な人に見えるかもしれません。ですが専門用語とは、基本的に自分への甘えです。つまり前提知識を伝えるという手間を省いて、楽をしようとしているわけですね。たまに「1部の人に分かれば良い」という意見を述べる人もいますが、本当に優秀な人は誰でも分かりやすい表現で難解な内容を説明できるものです。

②アルベルト・アインシュタイン

 アルベルト・アインシュタインは「6歳の子供に上手く説明出来なければ、理解できているとは言えない」という言葉を述べています

 だからこそ、過去の自分や身近な人だけでは不十分なのですね。なぜなら、それらの人は前提知識を持っている可能性があるから。良い文章を執筆するには、もっと前段階の無知な初心者をイメージして演じきるべきなのです。

最後に

 本日は「読者を演じてみる」というお話、いかがでしたか?

 どんなに有益な内容であったとしても、自分目線から一方的に執筆された文章では人には届きにくいでしょう。コミュニケーションでよく言われる「相手の立場に身を置く」とは、まさに文章力を極める上でも重要な意識ということですね。是非本章で紹介した3パターンから、読者と一体化することを心掛けてみてください。

 本日はご精読ありがとうございました。

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