本日のテーマは「アイデンティティ執着のリスク」についてのお話です。
アイデンティティとは、自分が自分であるという認識のことです。
例えば「私は社交的な人間である」、「私はスポーツが好きな人間である」など、全てが自分を形作った物語となるアイデンティティなのですね。そしてアイデンティティは、生きる上での指針となり、無秩序な世界を渡る不安からの隠れ家の役割も担っています。
ですが全ての物事に、良い側面と悪い側面があるのも事実です。アイデンティティへ執着することにも、他事と同様にリスクが伴うのですね。
本章では、アイデンティティ執着のリスクを3部構成で紐解いていきたいと思います。
自己成長阻害
アイデンティティ執着のリスク1部目は「自己成長阻害」です。
①学ぶこと・挑戦することの放棄
あまりにも今のアイデンティティに執着しすぎると、新しく学ぶことや挑戦することを放棄するようになってしまいます。なぜなら今の主観からかけ離れたことに触れると、否応なしにアイデンティティを変えざるを得なくなってしまうから。つまりアイデンティティを失うことと同義なのですね。
ただ新たなことに触れず、ただ同じことを繰り返すルーティーンのような毎日を過ごす。ここに自己成長はあるのでしょうか?
②不安が怖い
ではなぜ退屈で、同じことを繰り返すアイデンティティに人は執着してしまうのか?
その理由は「不安が怖い」からです。
まえがきでも少し述べたように、私たちは無秩序な世界で不安と隣り合わせで生きています。何が起こっても不思議ではない危険だらけの世界で身を守るには、アイデンティティを持って同じ行動を繰り返すことは合理的な方法なのですね。まさに不安の隠れ家という言葉は、ピッタリ当てはまるでしょう。
③不満を背負う
しかし安全に固執した生き方とは、不満を背負う生き方とも言えるでしょう。
新たな知識に触れて、行動というチャレンジをする。このドキドキした好奇心を味わうことが、自己成長の階段を昇っていくことです。この毎日が新鮮に満ちた感動を、不安解消と引き換えに捨ててしまう。個人的には、少し勿体ない気がしてなりません。
④冒険に飛び出そう
もちろん健康を大切にする、他者貢献するという、深い部分のアイデンティティを変革させる必要はありません。ですが不安の隠れ家が抜け出して、枝葉のアイデンティティを何度も刷新する冒険に飛び出してみませんか?
少しでも多くの人が、自己成長・好奇心いっぱいのワクワクな冒険を楽しんでもらえると嬉しいなと思います。
他人への否定
アイデンティティ執着のリスク2部目は「他人への否定」です。
1つのアイデンティティに執着している人ほど、他人の意見を否定しがちです。なぜでしょうか?
①滞在期間が長い
理由としては、1つの主観への滞在期間が長いからです。
変化を拒んで同じ場所に居続ければ、本能的にそのアイデンティティこそが絶対的真実だと錯覚するようになってしまいます。もちろん絶対的真実の信奉にもメリットがあり、迷うことがなくなり生きやすくなる側面もあるでしょう。
しかし思考停止を生み出し、自分とかけ離れたアイデンティティの人物に対して攻撃的な人間へと変容していく。そのデメリットにも、目を向けなければいけません。
②様々なアイデンティティに触れる
ではどうすれば、攻撃的な人格や他人を否定する罠から抜け出せるのでしょうか?
それは様々なアイデンティティに触れることです。新たな体験を重ねれば、アイデンティティはその都度変化していきます。そして様々なアイデンティティになった自分に触れることができ、客観的な視野を手にできる。そうなれば相手を攻撃することは激減します。
③絶対悪の認識
絶対悪への認識とは、自分が長年大切にしてきたルールを平気で破る人です。
つまり自分が変わらずに、停滞している証とも言えるのですね。成長している人であれば、たとえ成長過程でまだ未熟なアイデンティティの持ち主にも、攻撃的になることはないでしょう。つまり他人を受容することができるのです。
もし近くにすぐ否定の言葉を投げかけてくる人がいるのであれば、相手は不安いっぱいでたまらない人です。その防衛反応として、アイデンティティの隠れ家に居座っている。あなたはこの知識を知り、否定する人の心理を学びました。それを許せるアイデンティティへと刷新していきましょう。
自分中心の視野
アイデンティティ執着のリスク3部目は「自分中心の視野」です。
前項の他人への否定と同じように、アイデンティティの滞在期間が長い人には、もう1つのデメリットが生まれます。それこそが自分中心の視野という主観を持つことなのですね。
①興味・関心の欠如
ではなぜ自分中心の視野を持つのか?
それは興味・関心の欠如にあります。同じアイデンティティに滞在し続けているわけですから、他事に興味・関心を示さないアウトプットをし続けているのと同じです。脳の使わない機能が衰えるのは、まさに必然と言えますよね。
アイデンティティの進化・刷新を繰り返している人は、新たな成長機会を求めています。つまり今まで出会ったことのない主観との出会いを、本能的に探しているのです。そしてこの姿勢こそが、他者関心の視野という主観に繋がるのですね。
②承認欲→貢献欲
だからこそ「自分は…自分は…」と、承認欲に駆られたコミュニケーションに陥らなくなる。相手に興味・関心を持ち、無意識に相手の声に耳を傾けるようになる。そしてその働きかけは返報性の力がかかり、相手もこちらの声に耳を傾けてくれる。
本当に心が通じ合う対人関係とは、お互いが他者関心の視野を持ち、承認欲ではなく貢献欲で相手と接すること。そしてお礼として、お互いが承認を提供する関係だと思います。
もし対人関係に悩んでいる人がいるのであれば、自分や相手が承認欲を満たすために人と会っているのかもしれません。そしてその源泉には、アイデンティティの執着により作られた自分中心の視野があることを忘れないようにしましょう。
最後に
本日は「アイデンティティ執着のリスク」というお話、いかがでしたか?
アイデンティティを貫くと言えば聞こえは良いですが、デメリットの部分にもしっかり目を向けましょう。そして本当に重要な要素だけは変化させず、表面上の不安をかき消すためのアイデンティティはどんどんと刷新させていくべきです。すると成長スピードは加速し、他人に攻撃せず、思いやりを持った人格へと変化することが可能となるから。
本日はご精読ありがとうございました。
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