返報性の種類

心理学

 本日のテーマは「返報性の種類」についてのお話です。

 返報性とは、相手からの行為に対して、自分も同じ行為を返さずにはいられなくなる気持ちのこと。行為の内容が、プラス・マイナスのどちらの性質を持っているにしろ、否応なしにこの力は働きます。もしも返すことを我慢したのなら、きっとモヤがかかったような気分になってしまう。

 意識していてもそうなのですから、無意識の状態ではまさに自動的に行動してしまう。これはプログラムを打ち込むとその処理をするコンピューターのように、私たちも主体的行動が出来ないことを示した原理でしょう。

 本章では、そんな返報性の種類を3つに分けて深堀りしていきます。

恩恵

 返報性の種類1つ目は「恩恵」です。

 恩恵とは、相手から施しを受けること。

①助け合いで社会構築

 多くの人が相手から親切されれば、無意識にそれを返したくなるでしょう。人々はこの助け合いによって、文明を発達させて社会を構築してきました。

 そして恩恵の返報性は、長い年月や自分の現在の状況などを超越する力を持つと言われるのです。

②メキシコ地震のエチオピア支援

 では具体例として、メキシコ地震時のエチオピア支援のお話をご紹介します。

 1985年にメキシコシティをある地震が襲います。この自然災害では、死者1万人を出すほどの惨事だったと言われます。その際にアフリカの1国、エチオピアが支援を施してくれた。これだけ聞くと何も不思議には感じませんが、当時のエチオピアの状況を知ると、きっと驚愕することでしょう。

 この時期のエチオピアは、経済破綻寸前の状態でした。誰しもが自分自身に余裕がないときに、他人に対して施すことって出来ませんよね?ではなぜエチオピアは支援活動に動けたのでしょうか?

③50年越しの恩返し

 その理由は、1935年の第2次エチオピア戦争へと時を遡ります。

 エチオピアは西欧諸国の1つイタリアに侵攻されていたのですが、そんな苦しい時期にエチオピアを援助してくれたのがメキシコでした。つまりエチオピアは、50年前にメキシコから受けた恩恵に対して返報性の力がかかった。経済破綻寸前という状態ですら、その気持ちを護ろうと本能が動いたのですね。

 まさに50年越しの恩返しであり、この現象は人間が生み出す事象の中でも、最も綺麗な部類に入るのではないでしょうか。

搾取

 返報性の種類2つ目は「搾取」です。

 搾取とは、相手から搾り取られること。

①復讐劇のシナリオ

 返報性の力は、綺麗な感情だけではなく負のベクトルへも働きます。

 誰しもが相手からされた負の出来事に対して、倍返しで仕返しをしたい気持ちに駆られるでしょう。憎しみ・怒りという感情に飲み込まれれば、返報性により人生のシナリオは復讐劇へと転じてしまう。

②エンタメのヒット作

 エンタメとして、復讐劇を描いた作品は度々ヒットを重ねます。

 この理由は日常世界で受けた搾取に対して、法律・道徳により返報性の行動ができない鬱憤ばらしを、誰もが求めているからではないでしょうか。

 だからこそ作品の中で疑似体験として搾取を味わい、そして絶対悪という描き方をした敵を倒す。このような正義の執行人になれる作品を万人が好むのは、返報性にあるのではと私は感じます。

譲渡

 返報性の種類3つ目は「譲歩」です。

 譲歩とは、自分の主張を引っ込めて他人の主張と折り合いをつけること。

 返報性の力は、表面上分かりやすい「恩恵」や「搾取」だけではありません。一見気づきにくそうな「譲歩」にも、その力は隠れています。

 想像してみてください。もしも相手が折れて自分の言い分を受け入れてくれて、こちらに歩み寄ってくれるとどう感じますか…?きっと承認欲が満たされ、喜びを感じるのではないでしょうか。そして自分も相手の言い分を受け入れ、歩み寄りたいという感情を抱くはず。譲歩による返報性は、恩恵と同じく人が生み出す綺麗な感情ではないかと私は思います。

 譲歩については、また別記事でもUPしたいと思います。楽しみにして頂けると嬉しいです。

最後に

 本日は「返報性の種類」というお話、いかがでしたか?

 「恩恵」や「譲歩」の感情を返そうとすると、自分にとっては「瞬間的不利益」である行動をとってしまうもの。そのように損したとしても、人は返報性の力には抗えない。なぜなら「事象的負担」よりも「心理的負担」のほうが耐え難いモノだからです。

 そして多くの人がこの原理に従うことにより、瞬間的不利益は長期的利益となり、人類は協力し合って前進することが出来るのではないでしょうか。あなたも恩恵と譲歩の返報性には従い、搾取の返報性は抑えて、その相手から逃げましょう。

 本日はご精読ありがとうございました。 

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