嵩むと怖い「睡眠負債の悪影響」

睡眠

 本日のテーマは「嵩むと怖い・睡眠負債の悪影響」というお話です。

 皆さんは、睡眠負債という言葉を知っていますか…?きっと多くの方が、あまり聞き馴染みがない単語かもしれませんね。

 睡眠負債とは、睡眠不足が少しずつ蓄積していくことを、お金の借金が嵩むことに例えて造られた言葉です。借金が嵩むと家計が火の車になってしまいますが、睡眠負債も嵩むことにより体内で慢性炎症という業火を加速させてしまいます。「いつも何だかダルいな」という倦怠感に包まれているのなら、1度ご自身の睡眠洞察から始めてみてはいかがでしょうか。

 本記事では、睡眠負債によって引き起こされる悪影響を3つご紹介していきます。自分自身の心身に心当たりがないかも照らし合わせながら、インプットして頂けると嬉しいです。

マイクロスリープ

 睡眠負債の悪影響1つ目は「マイクロスリープ」です。

 マイクロスリープとは、1~10秒の瞬間的な居眠りをしてしまうこと。

 仕事や勉強に向かっていたはずなのに、机でウトウトしてしまった。このような経験は誰しも1度はあるでしょう。まさにその現象こそが、マイクロスリープの典型例なのです。

①脳の防衛本能

 マイクロスリープが起こる理由としては、脳の防衛本能から来ています。

 睡眠は身体を休息させるターンであり、スマホに例えるなら充電器に繋げる営みです。しかし睡眠負債が嵩んだ人は、使いっぱなしで充電器をあまり指していないスマホです。そうなれば電池はギリギリの境地になり、何度も端末がシャットダウンしてしまうことでしょう。

②運動中のマイクロスリープ

 このマイクロスリープは往々にして、車の運転中にも引き起こされます。

 日本人の平均睡眠時間は6,5時間と言われており、フランス人の8,7時間と比較すると、あまりに時間が足りていません。また約40%の日本人が6時間未満の睡眠であり、都市部に住む人程にそれが顕著なのだとか…。

 つまり多くの交通事故は、この約40%の日本人が睡眠負債という元凶によって、マイクロスリープを発動させてしまっているからなのだと考えられます。ちなみに時速60Kmで走行中に4秒間のマイクロスリープを起こすと、約70mも進行するのだとか…。仮に高速道路という環境で、さらに加速したスピードだと想像するだけで身が震える思いがしますよね。

罹患率UP

 睡眠負債の悪影響2つ目は「罹患率UP」です。

 心身の休息時間が少なく常に活動している人たちは、様々な疾病の罹患率が向上することも必然です。

①交感神経優位の過多

 なぜなら交感神経優位の過多に陥ってしまうから…。

 私たちには自律神経という、内蔵・代謝・体温などの身体機能を24時間でコントロールする神経が存在します。この神経は交感神経により心身ともに活動モードへと促し、副交感神経で使用した心身の休息・デトックスを行ってくれているのです。

 しかし睡眠負債が嵩んでいるということは、交感神経優位の過多は明白です。そうなれば身体・脳の細胞は回復せずに、心筋梗塞・脳卒中・認知症・アルツハイマー病・うつ病・癌などを誘発してしまうことでしょう。

②サンディエゴ大学の追跡調査

 このファクトは、アメリカ合衆国カリフォルニア州にあるサンディエゴ大学の追跡調査でも明らかです。この調査ではなんと10年間という期間を、被験者に密着して罹患率・死亡率の関連性を研究していたそうです。もちろん結果も罹患率の向上は明らかであり、死亡率も1,3倍と跳ね上がったそうです。

肥満

 睡眠負債の悪影響3つ目は「肥満」です。

 「睡眠不足と肥満に関係があるの?」と、きっと多くの方が疑問に感じたことでしょう。しかし悲しきかな、この2つは密接に繋がり合っています。睡眠負債が嵩んでいる人たちは、そうでない人と比較した時にBMI(Body mass Index)が高めであるという統計が出ています。ではなぜこの2つは、関連性が生じているのでしょうか?

 この項では睡眠負債と肥満の関連性の理由として、大きく3つご紹介していきます。

①グレリン増加

 睡眠負債と肥満の関連性1つ目は「グレリン増加」です。

 グレリンとは、胃から産生され食欲増進を促すペプチドホルモンのこと。

 このホルモンは睡眠負債を抱えるほどに、通常時よりも胃から過剰に産生されます。そして脳の視床下部に働きかけ、食欲増進を促してしまうホルモンなのですね。

②レプチン減少

 睡眠負債と肥満の関連性2つ目は「レプチン減少」です。

 レプチンとは、脂肪細胞から分泌され、食欲抑制や代謝活性化を促すホルモンのこと。

 こちらはグレリンと対照的に、睡眠負債が嵩むことにより分泌量が減少します。そして食欲抑制というブレーキが壊れ、さらに動いても脂肪を代謝する機能を衰えさせてしまっているのです。これら2つのホルモンにより必要以上に食べ、さらに動いても痩せない身体を現実に生み出してしまう訳ですね。

③前頭前野の機能低下

 睡眠負債と肥満の関連性3つ目は「前頭前野の機能低下」です。

 前頭前野とは、大脳の前頭葉の前方側に位置する皮質のこと。

 この部位は理性・判断・計画・感情抑制などの機能を任せられており、情動に関する部位となる大脳辺縁系を制御しています。しかし前頭前野は脳の多くのエネルギー消費を行うことから、睡眠負債を抱えた状態では働きが鈍化してしまうことでしょう。

 そして感情に意識をハイジャックされ、巷に溢れる糖質・脂質を絡めたジャンクフードの虜になってしまうという流れでしょうか。

最後に

 本日は「嵩むと怖い・睡眠負債の悪影響」というお話、いかがでしたか?

 睡眠負債を1度抱えると、それを返済するのは至難の業です。スタンフォード大学の教授でもある西野精治さんの研究結果としては、40分の睡眠負債を返すのに3週間の期間、身体が自然と目を覚ますまで寝る生活を続ける必要があったのだとか…。つまり週末の寝溜めなどでは借金を返せず、逆にサーカディアン・リズム(概日リズム)を崩して来週からの睡眠負債の原因となってしまう懸念もあるのですね。

 私の意見としましては他のどんな営みよりも何より優先して、まず睡眠時間の確保から1日のスケジューリングをするべきかなと思います。それが一見時間を失っているように見えて、多くの集中時間や幸福時間となって自分に返ってくるのだから…。

 本日はご精読ありがとうございました。

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