僧侶に聞くシリーズ②「四苦八苦」

客観力

 本日のテーマは「僧侶に聞くシリーズ②・四苦八苦」というお話です。

 日本人の多くは無宗教であり、宗教と聞くと疑心暗鬼の感情が生まれます。私も無宗教の価値観であり、どちらかというと合理的か否かで生きています。

 しかし常識も宗教も合理的も、1つの価値観を丸々と信用することは危険なのかもしれません。重要なことはそれぞれの価値観の全体像を、まずニュートラルにインプットすること。そして良い所だけ抽出して、自分だけの価値観をつくることでしょう。だからこそ宗教から学べる点もあるのですね。

 本記事では僧侶に聞くシリーズ第2回目として、仏教で説かれている「四苦八苦」という理論のお話です。私たちの日常生活と照らし合わせながら、吟味していきましょう。

四苦

 まず四苦八苦とは、人が生きていく上での8つの苦しみのことです。

 前半の「四苦」は生老病死の4つの苦しみであり、そこに更に4つの苦しみを足して「八苦」と定義しています。この項では四苦の「生苦」・「老苦」・「病苦」・「死苦」を、それぞれ覗いていきましょう。

①生苦

 まず生苦は、生きる苦しみです。

 私たちが日々生きていくためには、生命維持の活動をしなければいけません。古代であれば狩猟・採集であり、現代であれば仕事・家事にあたりますよね。どちらにしろ骨が折れる営みでしょう。

 もちろん仕事・家事を趣味として楽しんでいる人もいますし、それこそ人生のより良い生き方です。しかし仕事である以上、趣味のように気分が乗らなくても頑張らなければいけないときもある。

 天下統一を果たした徳川家康も「人の一生は、重荷を背負って遠き道を行くがごとし」という言葉を残しています。つまり生きること自体が、苦しみという重荷を背負って亡くなるまで歩き続けることだと、彼は考えていた訳ですね。

②老苦

 2つ目の老苦は、老いる苦しみです。

 例外なく誰しもが、年齢を積み重ねて老化していきます。

 そのことから物覚えが悪くなったり、疲れが中々とれなかったりするでしょう。更に女性や美意識の高い男性であれば、見た目が老けてシワ・タルミ・シミが目立つことは、とても憂鬱な感情になるはずです。

 今まで出来ていたことが出来なくなったり、持っていたものが崩れていく苦しみからは、誰もが逃れることができません。これを仏教では老苦と言うのですね。

③病苦

 3つ目の病苦は、病にかかる苦しみです。

 人間は病の器と言われる程に、人生の中で多くの病気にかかります。2~3日の風邪であっても、その最中はとても辛い時間帯ですよね…?更には年を追うほどに血管系の病気やガンなど、様々な病気の罹患率が上がります。

 特に日本人はガンにかかる人が50~60%と言われており、15~20%の人がガンで亡くなっているのだとか…。死と直結する可能性の高い病苦こそ、四苦八苦の3番目に列挙されているのではないでしょうか。

④死苦

 4つ目の死苦は、死の苦しみです。

 全人類に共通する苦しみとして、命は必ず尽き果てます。上記3つであれば、恵まれた環境で生まれ育つことで、苦しみをあまり感じない方もいるかもしれません。しかし死から逃れられた人類は、まだ誰1人としていないのですね。だからこそ、四苦の最後に定義されているのかもしれません。

八苦

 次に四苦八苦の「八苦」を覗いていきます。

 上記の項でご紹介した四苦に、更に4つの苦しみを付け加えます。八苦の中身としては「愛別離苦」・「怨憎会苦」・「求不得苦」・「五陰盛苦」です。

①愛別離苦

 まず愛別離苦ですが、愛する人と別れる苦しみです。

 人との新たな出会いは喜びに満ちていますが、喜びと苦しみはコインの表裏です。出会ったからには最後、別れる運命にあります。どんなに仲の良いオシドリ夫婦でも、どちらかが亡くなるという結末で離れてしまう…。

 この愛別離苦を表したことわざや四字熟語として「会うは別れの始め」・「会者定離」という言葉があります。どちらも出会った人とは、必ず別れるという意味を表しているのですね。

②怨憎会苦

 次に怨憎会苦は、煩わしい人に会わなければならない苦しみです。

 十人十色という言葉があるように、人の数だけ価値観は存在します。近い価値観の人とは共同体感覚が得られて癒やしを感じられますが、全ての対人関係が良好であることは皆無でしょう。

 特に現代社会はダイバーシティの価値観ですから、相手の価値観を尊重しなければいけない。しかし本能は、自分以外の価値観を無意識に拒絶する。また会社という帰属団体の中で、どうしても価値観が真逆の人と顔を合わせなければいけない。これが八苦の中の1つ、怨憎会苦です。

③求不得苦

 7つ目の求不得苦は、求めるものが得られない苦しみです。

 人間の欲にはキリがありません。どんなに相対的に満たされている人でも、更に上を求めてしまうもの…。

 ユニクロ・代表取締役社長の柳井さんも「1勝9敗を受け入れる」という言葉を残しています。ビジネスであれだけの成功を収めた人であっても、求めて得られない苦しみは感じているものなのですね。

④五陰盛苦

 最後の五陰盛苦は、身体や心があるがゆえの苦しみです。

 これまでの7つの苦しみを総括したものであり、五陰という言葉どおりに5つの苦しみに分かれます。その5つは「色(しき)」・「受(じゅ)」・「想(そう)」・「行(ぎょう)」・「識(しき)」です。

 それぞれの内容を軽く触れていくと、色は肉体があるがゆえの苦しみ、受は感覚があるがゆえの苦しみ、想は想像してしまうがゆえの苦しみ、行は意思あるがゆえの苦しみ、識は判断しなければいけない苦しみです。

 まさに四苦八苦の7つを、5つの視点から表したモノと言えるでしょうか。

最後に

 本日は「僧侶に聞くシリーズ②・四苦八苦」というお話、いかがでしたか?

 これらの苦しみは大なり小なり、誰しもが通る道でしょう。若い時期はまだ実感湧かないモノも多いかと思いますが、年長者になる程にきっと納得感を抱いていきます。

 次回記事では、この四苦八苦の苦しみを少しでも軽減する対策方法についてのお話です。人間である以上、苦しみを「0」にすることは出来ません。しかし生まれた「1」の苦しみを「2~3」と増やさないことは可能です。是非とも、楽しみにして頂けると嬉しいです。

 本日はご精読ありがとうございました。

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