「ニュートリショニズム」の落とし穴

食事

 本日のテーマは「ニュートリショニズムの落とし穴」というお話です。

 前回・前々回と「βカロテンサプリメント」や「果汁100%フルーツジュース」に、警鐘を鳴らす記事を投稿させて頂きました。

 そして本章では、これら2つの事象の行動原理の根幹にある「ニュートリショニズム」について深く掘っていきます。ではニュートリショニズムとは、一体何なのか…?どんな落とし穴が潜んでいるのか、それを本記事で明らかにしていきましょう。

栄養主義

 まずニュートリショニズムを日本に変換すると「栄養主義」となります。

 2002年にメルボルン大学のジョージー・スクリニスが「Sorry Marge(哀れなマーガリン)」という文章の中で提唱していた概念です。

①食品→栄養素

 栄養主義の具体的な内容としては、健康的な食生活をする上で「食品」に注目するのではなく、その中に含有される「栄養素」に注目するという考え方です。そのことから「この食品が身体に良い」という認識ではなく「この栄養素が身体に良い、だからあの食品をとろう」という発想になるのですね。

 もちろんニュートリショニズムの考え方でサプリを使用し栄養を補い、健康的な恩恵を受けられるシチュエーションも存在します。ニュートリショニズムの概念全てが、間違いだと断定するつもりもありません。

 しかし「食品主義」と「栄養主義」の2つの概念を、自分の頭で深堀りして考えることを忘れてはいけません。でなければβカロテンサプリメントや果汁100%フルーツジュースのように、マイナスのシチュエーションを生み出してしまうかもしれないからです。

②食品産業マーケティングに活用

 またニュートリショニズムをマーケティング活用したペテン師に、健康やお金を搾取されてしまうかもしれないですよね。

 ニュートリショニズムによる搾取の典型例は、EPA・DHAのオメガ3脂肪酸を謳った商品です。この商品はもしかすると、含有量は少ないかもしれない。またその油は酸化しているかもしれない。もっと深ぼるのなら、味付けしている塩分などを隠しているかもしれないのです。

 このように1要素の概念だけを信じることは、食品産業の血肉となり彼らの富を増やし、そのトレードオフの代償として自分自身の健康を明け渡していることに繋がってしまう。

 巷に溢れるサプリメントも同じです。有効なサプリもあれば、食品から摂取しなければ意味のない、または害になるサプリもある。そこまで網羅的に考える力があって始めて、栄養主義の考えも自分の力に出来ることを忘れてはいけません。

③デイビット・カッツの言葉

 このニュートリショニズムによるマーケティングや、それを思考停止で信じる人たちの多さに、イェール大学のデイビット・カッツさんは「食品中の成分に気を取られすぎた為、本当に栄養のある食品を摂取しなくなってしまっている」と警鐘を鳴らしているそうです。

栄養信仰の被害

 では次に栄養信仰の被害となる、落とし穴についてのお話です。

 例を出せば限りない程にありますが、ここでは2つの具体例を用いていきましょう。

①糖質制限ダイエット

 栄養信仰の被害1つ目は「糖質制限ダイエット」です。

 1972年アメリカの医師「ロバート・アトキンス」が提唱した、糖質を極限まで制限するダイエット法がこれに当たります。このダイエット法はアトキンスの名前が冠につき、アトキンスダイエットとも呼ばれていますね。

 しかしこの概念には、健康的な毎日を送るための「果物」というマスト食品を排除した思想を持っています。また「玄米・全粒粉穀物」などの、健康に良い茶色い炭水化物も許容しないほどの極論です。結果的に食物繊維・ビタミン・ミネラルなどの栄養が補充できず、痩身は果たせても不健康な道を歩むことは明らかでしょう。

 また糖質制限ダイエットで肯定される、赤身肉の摂取はどれだけでもOKという考えも問題の1つです。WHOは2015年に「加工肉は大腸がんのリスクを上げ、赤身肉も大腸がんのリスクを上げる可能性がある」と示唆しています。他にも赤身肉過剰摂取は動脈硬化を進め、脳卒中・心筋梗塞を引き起こす可能性もある。健康あっての痩身であり、痩身あっての健康でないことを思い出してください。

②βカロテンのサプリメント摂取

 栄養信仰の被害2つ目は「βカロテンのサプリメント摂取」です。

 こちらは前々回の記事で触れた内容なので、触りを軽く話す程度に留めておきます。詳しい内容は、是非とも「βカロテン・サプリメントには注意必要 」をご閲覧ください。

 1970年代までの研究結果で、βカロテンを多く含む緑黄色野菜や果物の摂取量が多い人は、胃がんや肺がんのリスクが低くなるとデータで表されています。そこで1990年代になり喫煙者・アスベスト曝露の人を対象に、βカロテンのサプリメントが肺がんのリスクを軽減させてくれるのかの実験を施行したのです。

 結果はと言いますと、なんと肺がんのリスクが逆に上昇してしまった…。それどころか、心筋梗塞のリスクまで上がってしまったそうです。昨今では栄養主義から食品主義に全体の価値観変容がありますが、その舵取りのトリガーとなったのがβカロテンサプリの実験だったと言えるでしょう。

最後に

 本日は「ニュートリショニズムの落とし穴」というお話、いかがでしたか?

 もちろん、栄養素を全く気にしなくて良いと言っている訳ではありません。有効なサプリもありますし、食品よりは吸収効率が悪いながらも、飲まないよりは摂取した方が良いサプリもあります。

 大事なことは1つの見解を鵜呑みにせず、様々な見解を集めて、自分の頭で考えて食生活のあり方を選択していくことではないでしょうか…?全てのことに根幹を見つめていく癖がつけば、きっと良い結果の確率も上がりますし、被害を受けたとしても他責思考にはなりません。そして「失敗は成功の母」という言葉どおり、新たに学びなおして、さらに自己成長していくことでしょう。

 最後に少し話が脱線してしましたが、是非とも食事は健康の土台の1つです。その分野だけは、自分の頭で考える人が増えてくれると嬉しいです。

 本日はご精読ありがとうございました。

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