本日のテーマは「表皮④有棘層」というお話です。
表皮シリーズも、遂に5層中4層目に突入することができました。馴染みのあった角質層や、あまり聞き慣れない顆粒層など、どちらも深掘り新発見があったかと存じます。そしてまた全くと言っていいほど聞き慣れない単語「有棘層」の登場です。
では有棘層とは、一体どんな層で、どんな役割があるのでしょうか…?本日も深掘りして、表皮の世界を垣間見ていきましょう。
有棘層の特徴
有棘層は、表皮内で最も分厚い層と言われています。
①分厚い層
その分厚さはなんと「8~10層」にも連なり、顆粒層の「2~5層」を大きく引き離します。また1つの細胞サイズもでかく、総合的に凌駕する結果となりましたね。
ちなみに角質層は「10~20層」と言われていますが、扁平でウロコ状な小さい細胞で、数という尺度だけで分厚さを測れない点もあるでしょう。
②強度と柔軟性
また有棘層の役割としては、皮膚の強度と柔軟性を支えています。
詳しいメカニズムは次項の「有棘層の名称由来」でご紹介しますが、ここでは簡単にざっくりとご説明させてください。
強度と柔軟性の根拠としては、有棘細胞同士は小さな突起で繋がっていることが挙げられます。全記事の顆粒層の記事で、「フィラメント」という長い線状のタンパク質の総称が、ケラチノサイト(表皮の細胞総称)を形作っているとお話しました。その線状という特性を活かし、隣接する細胞との接着を突起で形成している。これが強度と柔軟性の源です。
さらに有棘細胞自体もアポトーシスとは縁がなく、活発にタンパク質を合成しています。ですので1つのサイズも大きく明瞭で、それが8~10層に連なっている。これも皮膚強度のファクターでしょう。まさに有棘細胞は人間に例えると、20代の働き盛りと言えますね。
この分厚さと接着により、強度と柔軟性の二刀流を果たすことが可能となったのですね。
③多角形→扁平
そして上層側と下層側の有棘細胞では、少し形状に変化が見られることが特徴です。下層側では多角形の形状をして角ばっていますが、上層側になるにつれて扁平の形状となり平たく丸みを帯びていきます。
全記事の顆粒細胞形状のご紹介では、平たく丸みを帯びた形をしたケラチノサイトであると記述しましたよね。つまり有棘細胞の上層部は、もうすぐ顆粒細胞に変化するステージにあるということ…。それに対して下層部は、まだ若い細胞で細胞分裂を活発に行っています。そのことから真下の基底細胞に近く、基底細胞と合わせて「胚芽層」とも呼称されることもあるのですね。
④顆粒細胞と有棘細胞の共通点
これは1つ上の層にある顆粒細胞との、類似性を匂わせますね。
上層側と下層側で特徴が違うという類似は、顆粒細胞と有棘細胞の共通点です。
顆粒層の復習となりますが、下層部は代謝活発な深層で有棘層の特徴を持ち、上層部は細胞死の表層で角質層の特徴を持っている。とどのつまり、徐々に徐々にと細胞は万物流転しているのです。
有棘層の名称由来
では有棘層の名称由来について、深く覗いていきましょう。
ここから専門的なボキャブラリーが、複数登場してきます。是非とも目を刮目して、集中力の気を入れてご閲覧ください。
①棘が有るよ
まず強度と柔軟性の根拠として、小さな突起が繋がっているというお話を前項しましたよね。
有棘細胞は隣接する有棘細胞と、自らの細胞膜が互いに複雑に入り込んで強く結合します。この結合部が棘のようにも見え「棘が有るよ」という意味合いで、有棘層で命名されたのです。
②細胞間橋
またこの構造を「細胞間橋」と言います。
この結合部は棘にも見えるのですが、関連性を他に探そうと考えると、橋にも見えてきませんか。そして細胞の間にある橋という意味を込めて、細胞間橋とも呼称されるのですね。
③中間径フィラメント
ではここから結合部の理屈を深掘りしましょう。
有棘細胞には「中間径フィラメント」という、細胞の骨格となるフィラメントが存在します。なんとこのフィラメントの太さは10nmで、通常のフィラメントよりも太いことが特徴です。さらに中間径フィラメントは引っ張りに強く、細胞同士の接着による構造化の主役です。そして皮膚に強度・柔軟性を与えるのですね。
④デスモソーム
最後に「デスモソーム」という、タンパク質についても覗いていきましょう。
デスモソームは接着斑とも言われ、細胞の間の接着構造を担う物質です。
細胞骨格となる中間径フィラメントを、小さな突起の形状にして接着させているのは何の物質でしょうか…?そうそれがデスモソームであり、彼の力で結合されているのですね。
このデスモゾーム内に、中間径フィラメントの束が挿入されて小突起を型作ります。このとき顕微鏡でみると、中間径フィラメントがやや縮んで、細胞表面に多数の棘が現れるように見える。これが上記でご紹介した細胞間橋であり、有棘層の名称由来、さらには皮膚の強度・柔軟性の源なのですね。
最後に
本日は「表皮④有棘層」というお話、いかがでしたか?
名前もほぼ聞くことがなかった有棘層というケラチノサイトが、皮膚の強度や柔軟性を保ってくれている。このように私達は受けている恩恵の理論を知らずに、日々生きていることがほとんどです。ですが少し勉強すると、多くの事象・社会・人物などに感謝のマインドが感じられる。結果、オキシトシン分泌で幸せな毎日が遅れるでしょう。
このように勉強は物事を深く理解する他にも、多数のメリットが存在します。慣れない人には大変な営みかもしれませんが、筋トレのように出来る範囲から少しずつ始めてみてはいかがでしょう…?
本日はご精読ありがとうございました。
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