本日のテーマは「表皮⑤基底層」というお話です。
5記事に渡ってお送りしている表皮シリーズも、遂に本記事で最終章となります。そのトリを飾るのは、表皮の最も深層に位置する「基底層」です。名残惜しさもまだまだ残りますが、基底層とはどんな層で役割は何なのか、早速覗いていきましょう。
基底層の特徴
まずは基底層の特徴を、3つ纏めてみました。順にご紹介していきます。
①表皮・真皮の結合部
基底層の特徴1つ目は、表皮と真皮の結合部であることです。
真皮と表皮を繋げている層なので、表皮内では最も底にある層となりますよね。だからこそ文字通り、基底層という言葉には「底」という漢字が使用されているのです。
また2つの皮膚(真皮・表皮)を分離している膜が存在し、それを「基底膜」と呼称します。ですので直で通じ合っているわけでなく、膜1つで区切られているという具合です。人間に例えると寝室を同じ部屋にしているのではなく、隣の部屋に壁1つ隔てて分けているという感じでしょうか…。
②真皮血管から栄養・酸素の供給
基底層の特徴2つ目は、真皮血管から栄養・酸素の供給です。
実は驚くことに、表皮には血管が通っていないのだとか…。そうなれば栄養・酸素を供給する術がなく、細胞が壊死してしまいます。ですがそこは上手く設計されており、真皮の血管から栄養・酸素を吸収して表皮に拡散できるシステムなのだとか…。だからこそ表皮自体も、多細胞と同じく生きた細胞なのですね。
③ターンオーバーのスタート地点
基底層の特徴3つ目は、ターンオーバーのスタート地点というお話です。
表皮の細胞の総称を「ケラチノサイト(表皮角化細胞)」と呼んでいましたよね。その出発地点はこの基底層から始まり、まさにケラチノサイトの赤ちゃんと言えるでしょう。基底層の基という漢字は、スタート地点を表していたという訳です。
基底層は表皮の中で唯一、細胞分裂が観察される層です。分裂することによって基底細胞・基底膜との接着を失ったケラチノサイトは、上方に押し上げられていきます。そして「有棘細胞→顆粒細胞→角質細胞→垢」となって、剥がれ落ちていくというサイクルですね。
このようにケラチノサイトの幹細胞であることから「胚芽層」とも呼ばれており、だからこそ大きな基底細胞は一層で成り立っているのです。
ヘミデスモソームとメラノサイト
ではここから一歩踏み込み、基底層の応用編に入りましょう。
この項では「ヘミデスモソーム」と「メラノサイト」についてのお話を取り上げます。
①有棘層の復習
まずヘミデスモソームのお話を深掘りする前に、前記事「有棘層の復習」を少し交えさせてください。前回のお話では、中間径フィラメントという細胞の骨格となるフィラメントが、核周辺に分布していることをご紹介しました。
その中間径フィラメントたちは、デスモソーム内に束として挿入され小突起をつくります。デスモソーム(接着斑)とは細胞の接着構造を担う物質です。中間径フィラメントを糸とするなら、デスモソームは服のボタンのようなものに例えられるでしょう。
このようにして細胞通しは結び合っており、その小突起を見ると、棘がいくつも有るように見えることから「有棘層」と呼ばれるのでしたね。
②有棘層と基底層の間での細胞骨格
そしてここから「ヘミデスモソーム」のお話です。
ヘミデスモソームとは、有棘層と基底層の間で細胞骨格を形成する接着斑のことです。
デスモソームが有棘層の細胞通しを繋げ合わせていたのに対し、ヘミデスモソームは有棘層と基底層を繋ぎ合わせるための接着斑です。そして有棘層の内部だけでなく、この2つの層の間でも細胞骨格を形成するのですね。
この相違点が、前回お話したデスモソームと、今回お話したヘミデスモソームの差異ということです。
③一定間隔でメラノサイト
では次に「メラノサイト」のお話に移っていきます。
基底層の大部分を占める細胞は「ケラチノサイト(表皮角化細胞)」ですが、一定間隔で「メラノサイト(色素細胞)」が存在します。きっと美容に意識が高い方は、この言葉を知らない方はいないのではないでしょうか…?
なぜなら、日焼け・シミと関連性が強い細胞だから…。
④真皮への紫外線侵入ブロック
メラノサイトの役割としては、真皮への紫外線侵入をブロックしています。
顆粒層の顆粒がガラス状の性質を持ち合わせることから、紫外線を反射させる役割を持つと前々回に述べました。ですが全てを反射させられる訳でもなく、その関所を通過した猛者もいる。そこでメラノサイトの出番です。
メラノサイトは真皮に紫外線が届かないよう抑制するため、メラニンという色素を放出します。このメラニンがカーテンの役割を果たし、紫外線の侵入をブロックするという仕組みなのです。そして私達はメラニンというカーテンにより肌が黒くなり、それを日焼けと呼んでいるのですね。
⑤基底層・基底膜の劣化でシミ
ただ基底層・基底膜が正常に働いていれば、日焼けして終わりで後遺症は残りません。ですが活性酸素により基底層・基底膜の劣化が進めば、メラニン(色素)は表皮に留まらずに下の真皮に落ちていってしまう…。これがシミの正体です。
この経年劣化を少しでも防ぐために、日焼け止め・保湿はもちろんのこと、食事・運動・睡眠・ストレス対策(瞑想)などを万全にして、若々しい心身を維持することが重要になるのですね。
最後に
本日は「表皮⑤基底層」というお話、いかがでしたか?
基底層のフェーズでは、皆さんにも馴染み深い「メラノサイト」や「ターンオーバー」などの単語が飛び交いました。表面上だけ知っていた知識が深掘りされ、立体で認識できる。これこそ学びの喜びであり、真に知識(メラノサイトやターンオーバー)を知ることに繋がりますよね。
是非とも他の分野でも、好奇心に胸をときめかせながら学びを深めていってくださいね。次回記事では、真皮の話に移っていきます。楽しみにして頂けると嬉しいです。
本日はご精読ありがとうございました。
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