本日のテーマは「開発の歴史・エムドゲインとリグロス」というお話です。
歯周組織再生療法で使用される2つの薬剤には、エムドゲインとリグロスが存在します。本ブログでは「歯周組織再生療法とは何なのか…?エムドゲイン、リグロスはどのような薬剤なのか…?」を、ここまで持て余すことなく開示してきたつもりです。
そして最後の最後にここまでの復習も混ぜながら、両薬剤の開発の歴史を覗いていこうではありませんか…。一体どのような経緯があり、どの国家・組織が関与していたのでしょう…?早速、その真相を学んでいきます。
開発の歴史「エムドゲイン」
まず「エムドゲインの開発の歴史」を覗いていきましょう。
エムドゲインは、エナメルマトリックスタンパクから作られた薬剤です。このエナメルマトリックスタンパクは、歯のエナメル質に特異的に存在していることから、この名称がつきました。
①歯の発生過程関与が判明
ここまでは元々知られていた周知なのですが、そこから新たなファクトが1970年代になって判明します。
それは「歯の発生過程関与が判明」したのです。
元々エナメル質に含有しているからこそ、エナメルマトリックスタンパクです。ですが歯の下層部分にあるセメント質(歯根)の形成に、このエナメルマトリックスタンパクが関与していることが、真相として分かったのですね。
②スウェーデンが子豚歯胚から開発
そこで研究に乗り出したのは、北欧の国「スウェーデン」です。
彼らスウェーデンの研究員は、まずこのエナメルマトリックスタンパクの抽出から着手します。ですが、ここで1つ問題が生じました。それは「幼若エナメル質」にのみ、エナメルマトリックスタンパクは存在していること…。とどのつまり「成熟エナメル質」には、もうこのタンパク質は存在していないのです。
ここでスウェーデンの研究員が着目したターゲットは、生後6ヶ月の子豚の歯胚(歯の基となる芽)です。幼若エナメル質からなら、エナメルマトリックスタンパクを抽出できる。それならば「まだ産まれて間もない子豚なら…」と考えた訳ですね。
そしてこのタンパク質を基として「エムドゲイン」という薬剤が生まれたのでした。
③スイス「ストローマン」から販売
スウェーデンから緯度を少し南下したスイスに「ストローマン」という企業が存在します。
この企業から1995年となり、遂にエムドゲインは販売されたのです。現在は2024年であり、20年以上の歴史、約30年が経過しようとしています。これがエムドゲインへの信頼性の根拠となっているのです。
ちなみストローマンという企業は、世界最大のデンタルインプラントメーカーです。将来的に自分の歯で最後を迎えたという願いを叶えるには、あまりお世話になりたくない会社かもしれませんね…。
開発の歴史「リグロス」
次に「リグロスの開発の歴史」を学んでいきます。
リグロスは、線維芽細胞増殖因子(FGF)から作られた合成薬剤です。元々、線維芽細胞増殖因子や線維芽細胞というのは、皮膚の真皮に存在するファクターです。そしてコラーゲン線維・エラスチン線維などの繊維細胞を作り出す、つまりは芽となる細胞なのですね。だからこそ線維芽細胞と呼称される。
①大阪大学が歯科医療に応用研究
この皮膚修復の作用を、歯科医療に応用できないかと研究が始まりました。
なんと研究を開始したのが、我が国「日本の大阪大学」というから驚愕です。そして結果を出したのも日本であり、だからこそ健康保険適用の関連性が示唆されています。
②日本開発の世界初歯周組織再生医薬品
日本は遂に抽出した「線維芽細胞増殖因子(FGF)」を、遺伝子組換え技術により「FGF-2製剤」という、世界初の歯周組織再生医薬品を完成させました。
FGFとは「Fibroblast Growth Factors」の略語であり、日本語訳は「線維芽細胞増殖因子」です。とどのつまりFGF-2製剤とは、線維芽細胞増殖因子を遺伝子組換え技術に合成させた薬剤ということを、短文で表したものですね。
このようにして2016年に商品名・リグロスとして発売され、早速承認や保険適用になったという流れです。
最後に
本日は「開発の歴史・エムドゲインとリグロス」というお話、いかがでしたか?
2つの薬剤の具体的なメカニズムや長所・短所は、別記事で解説させて頂いています。そちらもご閲覧いただけると嬉しく感じます。
ただこのように開発までの歴史的背景を覗き込むと、多くの人の努力を実感することが可能です。この1つ1つ知る作業が、歯周組織再生療法に限らず、多くの恩恵に対して感謝の念が持てるのではないでしょうか…。そうなればオキシトシン的な幸福も感じられ、人生が豊かなものになるのではないかと感じます。
本日はご精読ありがとうございました。
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