本日のテーマは「宋書・倭国伝」というお話です。
タイトルになっている書物は、今から約1600年前の中国・宋南朝の歴史書です。この書物に古墳時代の倭(日本)について記されているというのですから、日本史を学ぶ上でも無視することが出来ないのではないでしょうか…?
では本章では、宋書「倭国伝」の元となる宋南朝について、さらにはその歴史書の中身に記された倭についても覗いていきましょう。
宋南朝
まずは「宋南朝」についてのお話です。
「あれっ?確か弥生時代の倭について記述された歴史書って、当時の中国王朝の歴史書じゃなかった…?南朝…?」と思った方、しっかりと文章の節々まで目を通していますね。素晴らしいことです。
①5世紀中国・南北朝時代
そう、5世紀の中国は「南北朝時代」に突入していたのです。
南北朝時代とは、中国の王朝が南北に並立した時代を指します。
とどのつまり1つの中国というまとまりではなく、2つの国に分離していたということ…。そして南の領土を統治していた王朝を南朝と呼び、その南朝こそ「宋南朝」なのです。現在の具体例に当てはめると、朝鮮半島の韓国と北朝鮮が分離していることに類似します。
この南北朝時代は、589年(6世紀)に隋王朝が中華統一を果たすまで続きました。この隋王朝は、次の時代区分となる飛鳥時代に日本との関連性も強い王朝です。ですので頭の片隅に繋ぎ止めていてくださいね。
②「宋書」倭国伝
そしてタイトルにもなっている「宋書」は、宋南朝・60年間の歴史書のこと。その一部に当時の倭のことが記述されており、それを我々日本人が「倭国伝」と呼称しているのです。
中国の歴史書から倭の当時を知ろうとする営みは、これが初めてではありませんよね。3つの歴史書となる「漢書・地理志」・「後漢書・東夷伝」・「魏志・倭人伝」により、弥生時代の倭について記されていました。
これら3つの歴史書により「倭という国名」・「奴国という北九州の国」・「邪馬台国」・「卑弥呼・壱与」などの情報が、日本に伝播したのです。同じような性質のファクトを挙げるのなら、日本車の海外仕様を逆輸入することに類似しますね。
では「宋書」倭国伝には、一体どのような内容が記述されているのでしょう…?次の項から、本題へと移っていきます。
倭の五王
結論からお話すると「宋書」倭国伝には「倭の五王」についてが記述されています。
①朝貢した大和朝廷の大王
倭の五王とは、宋南朝に朝貢した大和朝廷の5人の大王という意味です。
朝貢とは、中国の王朝(南朝)に貢物をするということ。とどのつまり倭(大和朝廷)は、宋南朝の属国というポジションにいたことが分かります。
現代で言えば一流企業に在籍する、高学歴を武器に入社したサラリーマンのようなものですね。実際に入社するためには、実力がなければ無理でしょう。ですが自分が先駆者や長として、能動的に自己責任で事業を動かしている訳ではない。あくまで強大な力に庇護してもらっている感覚です。
②讃・珍・済・興・武
そして倭の五王は、中国側から名を与えられていました。
その名は「讃(さん)・珍(ちん)・済(せい)・興(こう)・武(ぶ)」です。
この名称は中国人が母国語で読みやすいように、勝手に名付けた呼び名です。実際に倭ではそのように呼ばれておらず、天皇の家系図には別名が記載されています。
当時の倭が朝鮮半島の一国・加羅のことを、任那と勝手に呼称していたことに類似しますね。
③武が獲加多支鹵大王
1つ日本名の具体例として、倭の五王の最後に位置する「武」をご紹介しましょう。
その大王名は「獲加多支鹵大王」です。
この名前は本ブログをご閲覧している方なら、どこかで耳にした人もいるのではないでしょうか…。そう、稲荷山公園や江田船山古墳から出土した鉄剣に、獲加多支鹵大王の名が刻まれていましたよね。この発掘により、大和朝廷が関東から九州までを支配下にしている物質的根拠となったのです。
④雄略天皇&安東大将軍
そんな獲加多支鹵大王(武)ですが、現在の天皇名では「雄略天皇」と呼ばれます。さらには487年(5世紀)に、宋南朝から「安東大将軍」の称号も貰いました。これは弥生時代の奴国の王が漢王朝から「漢委奴国王」という称号を授かったり、邪馬台国の卑弥呼が「親魏倭王」の称号を貰ったことと類似しますね。
このように獲加多支鹵大王は、様々な名称を持つ人物です。是非とも関連付けて覚えてくださいね。
最後に
本日は「宋書・倭国伝」というお話、いかがでしたか?
日本史の記事をいくつかアクセスすると、共通項が見つかります。例えば今回の獲加多支鹵大王にしても、古墳の記事でも出てきました。さらには中国歴史書関連でも、弥生時代と繋がりますよね。
歴史に限ったことではないですが、関連付けて覚えること…。これが学習の精度・効率を飛躍させ、思考力も鍛えます。なぜなら脳の1000個の神経細胞(ニューロン)にデータは記録され、それをシナプスという樹状細胞が繋ぎ合わせ、脳に広大なネットワークを築いているから…。
是非とも関連学習を習慣にさせて、歴史や他の分野も繋げて、頭の中に知識の樹木を育てるイメージで学んでくださいね。
本日はご精読ありがとうございました。
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